イギリスの不動産市場 分譲賃貸市場緊縮、日本の不動産価格動向を考える

前回の記事に引き続き、不動産金融の授業で学んだことを書きます。

イギリスの金利は史上最低レベルの0.5%で7年間持続してきたことから、ロンドンのBuy-to-let(分譲賃貸)市場はブームの様相を呈しています。

不動産価格の上昇により、実需層は頭金を払えず、不動産を買うことはできず、キャッシュを持っている投資家が不動産を購入して賃貸に出して実需層から賃料を得ている構造がBuy-to-let市場を下支えしています。

しかし、Buy-to-let、投資物件の大家さんはバブル崩壊の時に一番早く売り逃げる人たちなので、Buy-to-let市場の混乱を防ぐために、イギリス当局は投資物件を規制する新しい政策を4月から実施すると発表してます。

FTは下記のように報道しています。

Interest rate have been stuck at a record low of 0.5% for over seven years, creating a boom in buy-to-let as those with cash search for better yields.

Regulators are concerned that in a downturn, buy-to-let investors might seek to exit the market at the same time.

また、イギリスがEUから脱退するのではという不確定要素はクレジットクランチを引き起こす可能性があるとBank of Englandが警告しています。

具体的な緊縮政策は以下の3点。

  • 2016年4月1日から、投資用物件、もしくは2件目の物件を購入する場合は、Stamp Dutyを払う
  • 2017年から、住宅ローンによる減税の上限を設ける
  • 銀行が住宅ローンを審査する際に、ストレステストの実施が義務付けられる(住宅ローン金利が5.5%に引き上げられても、支払う能力を有するかどうか、金利だけではなく、不動産賃貸による税金、諸コストも考慮する)

イギリスの不動産業者によると4月1日の前に購入する駆け込み需要が発生しています。

 The restraining measures test whereby mortgage rates rise to 5.5% and more stringent affordability tests which take into account the borrower’s costs of letting out the property, including tax liabilities.

From April 1, those buying rental properties or second homes will have to pay a stamp duty surcharge and from 2017 there will be new limits on mortgage interest tax relief. (From FT)

 

イギリスで家を購入する予定のない私なので、イギリスの不動産価格がどう動くかは他人事ですが、東京と同じ大都市のロンドンの不動産価格が下がると、東京の不動産価格にもベンチマーク効果があるのではないかと思います。

イギリスの住宅不動産協会は早速BoEの提案が「Premature」未熟、と批判しているようです。

不動産業界の人間からすると嬉しくないニュースかもしれませんが、 実需の購入予定層からすると、投資不動産抑制政策は嬉しいニュースでしょうね。

話は変わりますが、日本の不動産価格の今後の動向の記事を見ると、いつも3つのトピックが上昇材料にされています。

2020年オリンピック

富裕層の相続税対策

海外投資家(主に中国マネーの流入)

 

果たしてこれらは日本の不動産価格にどう影響するのか、授業で学んだ理論をベースに分析してみたいと思います。

不動産の価値は、賃料、資金コスト、成長性で決まります。

また、不動産価格は実需の賃貸市場と投資の売買市場で決まります。

  • 2020年のオリンピックは成長要素で、実需市場を作り出す要素
  • 海外投資家、富裕層相続対策は成長要素で投資市場でのニーズを作り出し要素

と考えます。

ただし、これらの要素は昨日今日始まった話ではなくて、すでに価格に反映されています。2013年から、日本の不動産価格がずっと上がり続けています。

不動産価格はもうピークに達しているのかどうかついてはどう考えるべきか?市場がいくら非効率的でも2013年からわかってることはさすがにもう反映済みだと思います。

チャイナーマネーの流入と富裕層相続税対策によるニーズはすでに勢いがなくなっているように感じます。

マイナス金利は、不動産価格を押し上げる効果があるはずですが、今日のニュースでこんな記事が出ています。

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大手銀行は31日、4月の住宅ローン金利を発表した。三井住友銀行は10年固定型で、最も信用度の高い人に適用する金利(最優遇金利)を3月より0・10%引き上げて、年0・90%にすると発表した。

利上げは、不動産価格を下げる効果があります。

やはり、2016年は東京の不動産価格上昇がピークを迎える年になるということでしょうか。