大学院の不動産の授業で学んだことと日本不動産価格の動向

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今週から大学院で不動産の授業が始まりました。

主に不動産の価値評価、不動産開発の資金調達、不動産の資産証券化などのトピックです。

まだ3回しか授業を受けていませんが、シンプルで面白かったです。

日本の不動産価格、特に都心の不動産価格は2、3年前から急騰し、マイナス金利政策が導入された中で、これからの日本の不動産価格はどう変動するか、考える材料を提供してくれた授業でした。

本日までの主な学び

マイナス金利と不動産価格の関係

マイナス金利は不動産価格を押し上げる効果があります。

―Discount rateの下落 (lower benchmark for return)

―不動産購入の資金調達がしやすくなる(Cheap money)

―不動産は長期資産なので、利下げが価格に反映されやすい(Long term asset sensitive to lower interest rate)

 

不動産価格と賃料の関係

賃料は不動産価格に遅れて変化します。不動産価格が上がっても、収入が上がらない限りは賃料は動かない。

東京カンティーの2016年2月の不動産賃料データを見ると、首都圏は前月比-1.5%の下落、東京都は1.1%の上昇。

 

株価と不動産価格の相関関係

-低い=>大きな傾向としては同じですが、細かい変動は逆方向であることから、相関関係が低い。

-株式市場は不動産市場より市況の変化に敏感(Stock markets leading property markets)

 

不動産のValuationと利回り

不動産の利回り = 年間賃料/不動産価格

という式をよくみます。

これは実は、コーポレートファイナンスで企業価値評価の手法であるPerpetuity Valueの考え方と同じです。

つまり 不動産価格 = 年間賃料 / 不動産の利回り

この不動産利回りのことをCap Rate (キャップレート)と言います。

利回り =Cost of Capital – Growth Rate

Cost of Capitalは資本市場で決まり、Growth Rateは実需の賃貸市場で決まるということです。

利回りの低い物件の方が、価値が高いことになります。

利回りが低いということは、Cost of Capital が低い(リスクの低い資産)、Growth rateが高い(成長性が高い資産)ということを意味します。

たとえばアメリカの不動産利回りを見ると、住宅不動産は一番利回りが低い。なぜなら、商業不動産や倉庫などと比べると一番安定した収入と成長性が見込めるからです。

不動産のUnlevered Return とLevered Return とIRR

不動産のReturnを見る時に、Asset ReturnかEquity Returnかを区別する必要があります。

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今後の日本の不動産価格どうなるか

これらの知識を今後の日本の不動産市場に当てはめると、以下の三点を考える必要があります。

  1. マイナス金利は、不動産価格を上昇させる効果があり、短期的に不動産価格が上がるはずです。問題は、これから、更に利下げの余地はどれだけあるか?
  2. それから、日本の成長性です。高い成長性が見込めるか。
  3. インフレになれば、収入が上がり賃料が上がるという状況になるか。

日銀の意図としては、金融緩和で①、②、③すべて不動産価格が上昇する傾向に誘導したいということですが、果たしてそうなるかどうかということです。

私の見解としては、短期的に大幅な上昇はないものの、この政策が続く限り、大幅の下落も見込めないと思います。

ただし、最近の日本不動産価格の上昇の裏に、チャイナーマネーの流入があり、中国経済バブル崩壊のリスクだけは懸念点です。