インターネット企業のバリュエーション手法ー楽天

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多様なビジネスを行っている楽天のようなインターネット企業のバリュエーションをどう計算すべきか。

楽天の事業は、楽天市場、楽天証券、楽天銀行と保険、楽天トラベル、楽天カード、その他事業のViberとKoboから構成されている。

事業によってバリュエーションの評価方法は全然違う。

ある大手外資系証券会社のアナリストレポートを読んでいたら、このような会社の場合は、SOTPという手法、つまりSum-of-the-parts、其々のビジネスの最適なバリュエーション方法で、パーツごとの価値を算出し、合計して全体の価値を出すというやり方。

We use a sum-of-the-parts (SOTP) valuation based on Internet services, securities, credit

card, and banking and life insurance.

それでは、各ビジネスラインの価値をどう計算するか。

①楽天市場のECビジネス

楽天市場のECビジネスには、DCFを用いている。

  1. DCFを計算するのに、一番重要なAssumptionは、WACCとEV/EBITDAである。Risk Free rate = 1.8% Beta = 1.3Cost of Equity = 8.3%After tax of Debt = 1.95%DebtはNet Debtを用いる。
  2. D/E Ratio = 0.9x
  3. Interest Rate = 3%
  4. Market Risk Premium = 5.0%
  5. WACCは、5.26%としている。

②楽天証券
楽天証券には、P/Eレシオ、日本でよく言うPERが適用されました。

上場オンライン証券会社の平均PERを使ったようです。上場オンライン証券会社には、松井証券、Kabu.com、マネックス、SBIが含まれており、Reutersのマーケットコンセンサスを使っていました。PERの平均が19倍。

We apply a 19x P/E to our JPY13.2bn FY3/16 estimate (adjusted) to determine the value of Rakutens securities business.

 

③楽天カード 

同様に、PERが適用されました。 ただし、PERの出所はAeon Financial Service’s とReuters コンセンサスからでした。

④楽天保険と銀行
Net Assetを使っています。

このように、DCF、PEマルチプル、Net Assetなど3つの手法を使って各ビジネスラインの価値を算出し、楽天会社全体の価値を算出しました。

レポートのAppendixに、2018年までのP/L、B/Sの予想が掲載されています。それを使って、DCFの予想を出しているのでしょう。 2018年の現地価値を使って、ターミナルバリューを出してDCFを算出しています。

別の大手米系外資系証券会社のレポートを見ると、同じようにインターネットサービスにDCFを使い、ファイナンスサービスで同業他社比較を使っている。

DCFのAssumptionはちょっと異なる。Risk Free rateが1%、Market premiumが4.5%、Beta 1.2、Terminal Growth rate 2%となっている。

We use DCF modeling to value the internet service business, and a comparison with competitors to value the internet finance business.

日系メガバングが買収した大手米系証券会社のレポートには「各社のビジネスドメイン毎に成長性を加味した業界標準PERを適用、利益構成比率で加重平均しターゲットPER を35 倍とする(前回は32 倍)。新事業等の業績回復の通期寄与が16 年度のため16 年度EPS75 円を採用(前回は15 年度EPS58 円)」と書いてあった。ここもPERを適用しているようだ。

 

更に、もう一社のヨーロッパ系の大手証券会社が2015年5月に発表した楽天のアナリストレポート、Buyと推奨している。

バリュエーションの手法を見ると、面白いことに、DCFとNet Assetを使っておらず、PERしか使っていない。

楽天市場をはじめとするネットサービス、および、楽天カード、楽天銀行、楽天保険に40倍のPERが適用されている。

楽天トラベルには30倍、そして、楽天証券には15倍、その他には20倍となっている。

We use adjusted PERs of 40X for Rakuten Ichiba + other Internet services + Rakuten Card + banking + other finance operations, 30X for travel services, 15X for securities, and 20X for others.
利益予想は2017年の予想を使っている。

最後に銀行系日系大手証券会社のレポートを見てみた。 ターゲット株価が2300円、バリュエーションはResidual Income Model、PERも考慮している。ターゲットPERは31倍。楽天の全体の収益は、クレジットカードビジネスのコストレシオに大きく依存しているみたい。

楽天は、今期からNon-GAAPのセグメント営業利益の開示を開始したようです。